おたくの文章

ミーハーです!

自己愛ってむずかしい

生まれたまんまの自分を愛せたら幸せだけど、私にとってはとてもハードルが高いことだと思う。

 

アンジュルムの「ハデにやっちゃいな!」が大好きで、すでに新曲が何曲も発表されているのにひたすらこの曲を聞き続けてしまう。

洒脱で垢抜けたファンクソングで、自己愛を歌いつつ、アイドルとファンの関係性を逆手にとったような歌詞が含まれているのも良い。「誰かの好きな私 どうせ 100くらいあるし」とか「少しリップ色変えたって バレないよ」とか。

アンジュルムには、以前から「タデ食う虫もLike it!」や「SHAKA SHAKA TO LOVE」などアイデンティティを確立して自分を愛する内容の楽曲が存在している。

その中でも、私がこの「ハデにやっちゃいな!」を好きだと思うのは、自己愛を強調しすぎないところだろうか。

 

2010年代後半から聞かれる「セルフラブ」や「ボディポジティブ」だが、実際、本当に生まれたままの自分を好きだと思える人はどれぐらいいるだろうか。

私は生まれてこの方(覚えている限りでは小学校低学年ぐらいの頃から)ずっと自分に自信がない。なるべく早く死んじゃいたいな〜!と思いながらなんとか今日も生きている。

自分について、基本的には不細工だと思っているし、この日本社会で望まれるような美しさには少しも届いていないと思っている。体型には特にコンプレックスがあり、なるべく人前での露出の多い服装は避けたい。性格もこのブログにあるように湿っぽいし、自分の欠点なんていくらでも書けてしまう。

セルフラブもボディポジティブも、できたらすごく幸せだと思うし、できている人に強く憧れるが、自分が実行するにはとてもハードルが高い。そもそも自分を愛せるような社会・文化で育ってきてないし、そんな中で自分を愛せと言われても、「そんなこと突然言われましても」という感じだ。

そう思っている人は多いようで、最近では自分の身体を感じたままに受け止める「ボディニュートラル」といった言葉も聞かれるようになってきた。私は断然、そちらのほうに馴染みを感じる。テレビを見ても電車に乗ってもスマホを見ても「垢抜けよう」「脱毛しよう」「肌を白くしよう」「女性ならではの」「日本人なら」「メンヘラは怖い」「普通になろう」……と聞こえてくるような日本社会では、自身のあるがままに対してポジティブでいることはとても大変で、きっと「ボディニュートラル」のほうに共感する人も多いのではないだろうか。

 

人をすぐにジャッジメントするこの国で、「ハデにやっちゃいな!」はそうしたジャッジメントからの逃避法を伝えている。

この曲には「私になる」という言葉が登場する。

私はこの言葉を「生まれたままの私は"私"ではない」という意味に受け取った。「私になって燃え尽きたい」とは、「今の私はまだ"私"ではないから、燃え尽きるほどの情熱を持てるような"私"になりたい」という意味だろう。

生まれたそのままの自分はまだ"私"ではないのだ。そのために、この楽曲では自分を飾ったり、リップの色を変えたりする。この歌詞に、私は深く共感してしまう。

好きなものを選ぼうとする自分も、人として正しくあるように律している自分も、生まれたまんまの自分ではない。ある程度の努力が伴った結果のものだ。生まれたそのままの自分を愛することは難しくても、私が「これがいい」と望み、選びとった結果の私を認めることはできる。

「ありのままを愛せ」と言われて、本当にありのままの自分を愛することは難しい。どうしたって欠点が目につくし、欠点を含めた自分までも愛せるほど私のメンタルは強くない。だからこそ生まれたまんまの私ではなく、"私" を求めて好きなものを身に着けたり、努力したりするのだ。そしてきっと多くの人がそうなのではないだろうか。

人間はみんな、少しでも良くなろうとして生きているのではないだろうか。生まれたままの私よりもちょっと新しくてちょっといいバージョンの"私"を目指して生きるのが、人間の美徳だと私は思っている。(生まれたままの自分よりも悪くなりたいと進んで努力する人はすごく少ないだろう)

だからこそ、この曲を聞いていると、心底わかるなあ〜と頷いてしまうのだ。

 

そして、その中で「黒歴史大歓迎」と言ってくれるところが、すべての人間に対しての救いになっていて、そこもめちゃくちゃいいなと思う。

どんな人も生きてりゃ黒歴史が生まれるもんね〜。

 

以下余談

 

アンジュルムに提供される楽曲は基本的に自他の境界が引かれていて、同一視しないところが聞きやすさのポイントだと思っている。

異性愛の)恋愛曲が少ないこともすごくいいし、ルッキズムナショナリズム、エイジズムに寄らないところも私にとっては好ましい。実際そういうの話してて楽しい〜って思うこと少ないしさ……。だからなのか、新曲の「悔しいわ」を聞いて少しだけ引いてしまった。え〜人のこと陰キャとか言う?とか、主婦だってむっちゃしんどい職業なの今どき皆知ってるのに、そんなふうに言うかな?とか、考えなくてもいいことを考えてしまうキーワードの選び方だと思う。

でも大学生のとき、同い年の藤浪選手の年収を聞いて"なんですと〜!?"と思ったことはあるから、きっとこの気持ちの歌なんだろうなとは思った。私がどう頑張っても藤浪選手にはなれないのだから、そういう無意味な羨望はよして、堅実に努力しようとする歌なのだろう。キーワードのチョイス以外は理解できる歌なんだよな。