おたくの文章

ミーハーです!

最近ときめいた漫画、がっかりした雑誌

『無敵の未来大作戦』(黒崎冬子著)を読んだ。

少子化に直面した日本政府は「子どもを産むには経済的に苦しい」「子育てに対する支援が少なすぎて余裕がない」という国民の声を聞き、何故か(本当に何故か)超富裕層のなかから人格にも優れた"聖人"を選別し、その人物に重婚を許可する所謂"聖婚制度"を発表した。この時点で本当に意味不明すぎて、「現実の日本政府を見てるみたい!」と胸がときめいてしまう。訴えられた国民の窮状から出力される政策がマジでなにそれ!?な日本政府のことをよく理解してる〜!!

さて、そんな謎制度が存在する世界で、経済的に厳しいシングルマザーの家庭で育った主人公の瑛子は、学校のプリンス・良々田が聖人に選ばれたことで、母に恩返しするべく良々田との聖婚を目指し奮闘する。

ここまで読むと、これまでにもよくあった婚姻制度をモチーフとしたラブコメディのようだが、この漫画は少々違う。

この漫画では、レズビアンの聖人が女性と結婚しのびのびと生活する姿も描かれるし、ゲイの登場人物がその感情を否定されることなく描かれている。そしてなにより私にとって大事なのは、この漫画がAROの視点から描かれていることだ。

ネタバレになるので詳しくは書かないが、作品の後半で「この恋愛ってやつ超無理!」「恋愛することも結婚することも俺に対して祝福してほしくない!!気持ち悪い!!!」と率直に吐き出される台詞の数々に、私は高笑いしてしまった。私が日頃から思っていることをこうもはっきりと(気持ち悪い!と!!!)、アロロマンティックの人々に対する気づかいなしに、後ろめたさなしに、憧れなしに描かれている漫画を、私は初めて読んだ。本当に!!私に対して恋愛や結婚の願望を託してほしくないし、それに関わることで私を祝福して欲しくない!!!気持ち悪いから!!!!AROの登場人物の切実な望みに胸を打たれたり、共感で涙を流したことはあっても、読んでいて爽快な気分になったのは初めての経験だった。めちゃくちゃ楽しい。友だちにおすすめしまくろう。

荒唐無稽なギャグを盛り込みながらも、胸の大きさをからかわれ続けた女性キャラクターが主体を取り戻したり、親から"女の子としての幸せ"を望まれたキャラクターがアフリカで(自分が選んだパートナーと)密猟者を捕まえる仕事をしたりなど、さまざまな女性たちが自分らしく生きる術を手に入れていくストーリーであるところも本当に素晴らしい。

 

打って変わって、いつも読んでいる雑誌が今回は「彼とのシェア服」がテーマだった。本当によく読むので雑誌名はあえて出さないでおく。メンズ服を着こなしがわかるのはありがたい(私はメンズ服のデザインに惹かれることが多い)ので、途中まではなるほどとうなずきながら読んでいた。しかし、途中から「"彼"目線でこのファッションはどう見えるのか」と繰り返されるコメントに苛立ちが我慢できなくなり、果てには「男子ウケメイク」のような特集ページまで登場したので呆れて読むのを中断した。

毎回毎回思うのだが、世の中は女性に対して「露出が多いのはかえって引く」だの(その人が化粧しててもすっぴんだとか言うくらい判断力ないくせに)「すっぴんは嫌だけど厚化粧も嫌だ」だの簡単に言い過ぎじゃないだろうか?私は好きなアーティストがノリノリで「やっぱフリルを着てほしいですね笑」みたいなこと言うたびに「他人に着せたいほどフリルが好きならオメーが率先して着てろよ」と思う。

特に私には恋愛の機微なんてものが一切理解できないので、女性の服装にノリノリで意見を述べる男には余計に苛立ちが湧いてくるし、そこで言及される服装の傾向と自分が着ている服装の傾向が被っていた場合には、本当に気持ち悪く感じてはやく違う服装に変えなくては……と不安になってくる。そういうつもりでこの服を着ているわけじゃないのに、なぜ一方的にジャッジメントを受けなければならないのか。本当に気持ち悪いし悔しい。

そういうものが全部無くなれとまでは思わないけれど、せめて今まで全然その気はなく読んでいた雑誌でまで「男の目線」を意識させるような特集を組むのはやめてほしい。あとアーティストにヘテロロマンティック/セクシュアル前提の質問するのもやめてほしい。編集者と質問者の無神経さが怖くてキモいので。

『無敵の未来大作戦』を読んで多少気が大きくなった今だから書けるブログを書いた。