社会人になってから、やたらと「成功」とか「勝利」とかいう言葉を聞くようになった。
聞くというか、「成功」や「勝利」を目指そう！ それは素晴らしいことだ！ と言われるようになった。新卒で入社した会社では『7つの習慣』という有名な自己啓発本の新人研修を受けた。今の会社でも似たような研修を社員全員が受けることになっている。
しかし、それらの研修を受けても、私は「成功」や「勝利」を目指そうとは思わなかった。そもそも、私にはこのような場で言われる「成功」や「勝利」がどういう状態なのか、そうなったら何にとって素晴らしいことなのかが全く理解できないからだ。研修を受けていても、「成功」や「勝利」は地球に住む全員が望むことだと確認もなく共有されているような空気があるので、講師すら「成功」や「勝利」の定義の確認などしない。ただ「成功」や「勝利」をしたという人が「成功は素晴らしいです！」「勝利は最高です！」と自信満々に語るのを聞くと、実在しないものではなさそうだとは理解できる。
「成功」や「勝利」とはいったい何で、何にとって素晴らしいのか？ 私以外のみんなはすでに知っているようだ。それを成し遂げた人もいるらしい。
でも、私は全然理解できない価値観だ。
なんだかおいてけぼりにされている気分になる。
みんないったい何になろうとしているのか？
誰の土俵に乗っている？
